祭祀の承継は、祭祀主宰者たる故人の指定がなければ慣習に従うことになりますが、慣習って難しいですね。
JAZZ好きの行政書士城間恒浩(@jazzyshiroma)です。
僕は沖縄県那覇市松尾で遺言相続専門の行政書士として、遺言書や遺産分割協議書の作成、相続や終活のご相談を承っております。
これまで関係した遺言書・遺産分割協議書・贈与契約書等の作成は200件以上、相続相談は400件以上となっており、相続や遺言のことでお困りの方がいることを日々感じ、「相続は準備させすれば、ご本人もご家族も幸せになれる」ことを実務を通じて確信しています。
このブログでは、実務を通じて感じる相続や遺言の話を中心に書いています。
また、たまに相続や遺言以外の好きなジャズのこと、日常や僕の想い・考えも書いていますよ。
本ブログが少しでもお役に立ちましたら嬉しいです。
慣習に従うこと
今朝(6/14火)の琉球新報の社会面に金武町金武区の金武入会権者会の入会資格を見直し、区内に住む女性の子孫にも入会資格を認める改正をし、この4月から施行されたとのニュースがありました。
金武町にある米軍キャンプ・ハンセンの用地として使用されている「杣山(そまやま)」と言われる入会地の賃料を金武入会権者が受け取り、入会権者である会員に還元しているようですが、その入会資格についての見直しがあったようです。
「入会権(いりあいけん)」は、村落共同体などのあるの地域の住民集団(入会団体)が山林・原野など(入会地)を総有して、共同で使用・収益する慣習上の物権とされ、民法263条の共有の性質を有する入会権と同294条の共有の性質を有しない入会権が定められています。
金武入会権者会については、過去に最高裁判所で争われた事件「地位確認等請求事件」(最二小判平18・3・17)があります。
この判決では、入会団体の入会資格を定める入会会則で、入会団体の構成員資格(入会資格)を世帯主に限ることは許されるけれども、女孫子は認められず、男孫子だけに限るのは民法90条の公序良俗を定める規定に違反して、無効であるとされたものです。
昨今の、男女平等が叫ばれる中にあっては当然のようにも感じますが、入会権の性質上、入会団体の会則などが保守的であったようです。
と言うのも、入会権を定める二つの規定に共通していることがあります。
(共有の性質を有する入会権)
第263条 共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する。(共有の性質を有しない入会権)
第294条 共有の性質を有しない入会権については、各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する。
各地方の「慣習」に従いなさい、と書かれているのです。
原則的には、地域の慣習に従った、取り決めでいいよ、ということですね。
ということは、地域の慣習に従った取り決めは、保守的になってしまうのは、想像に難くないでしょう。
ただし、先の金武入会権者会の見直しについては、昨今の世の中の流れで男女平等の考えからも慣習を見直して、取り入れたことは画期的だったのだと思います。
祭祀主宰者について
民法では「慣習」との単語が思いのほか使われています。
例えば、民法92条「任意規定と異なる慣習」では次のように規定されています。
(任意規定と異なる慣習)
第92条 法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。
また、民法の相続を規程する中には、亡くなった方のご供養に関する「祭祀承継」に関する規程がありますが、これも慣習の定めがあります。
(祭祀に関する権利の承継)
第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
わかり易く言えば、被相続人(故人)や被相続人が祭祀主宰者としてご供養していたご先祖様の祭祀に係る、系譜(家系図など)、祭具(仏壇、仏具、位牌など)や墳墓(お墓など)は、次の優先順位により承継されます、との定めです。
1.被相続人(故人)の指定(遺言書など)
2.慣習
3.家庭裁判所の決定(審判)
沖縄でも、相続に関係して、祭祀主宰者が誰になり、祭祀財産を誰が承継するのかは、とても大事で、重要なこととされていると思います。
トートーメー(位牌)やお墓を誰が承継するのかということですね。
一般的には、その家の長男が承継することがありますが、二男の家であれば、その家の二男が承継するなど、地域によった慣習があると思います。
また、沖縄には祭祀承継の慣習として、4大タブーというものがありますが、これも現代では遵守するのは難しくなってきているのではないでしょうか。
また、今後は沖縄も少子高齢化が顕著となりますので、子供たちが祭祀の承継で困ることもあると思います。
僕も相続手続きの際に、祭祀主宰者については、多くのケースで話題にのぼります。
管理型霊園を運営する公益財団法人沖縄県メモリアル整備協会にもご供養(永代供養、閉願供養など)、お墓(墓仕舞いなど)などの祭祀に係るご相談が多いと聞いています。
既述したように、祭祀主宰者についても、遺言書などで指定可能です。
この先の家族の在り方、現状をしっかり把握して、次の世代にどのようにして、祭祀を承継するのかを考えるのは大事なことです。
これまでのご供養の方法に固執して、子や孫たちを苦しめることのないようにすることも大切な視点だと思います。
過去にご相談のあった事例ですが、自分の代で大きなお墓を作って、10歳にも満たない孫を養子にして、お墓を承継させたいと、おっしゃる方もいましたが、自分が悩んでいることを年端もゆかない、幼い子供に押し付けているとしか見えませんでしたので、他の手段も考えてはいかがだろうか、と提案しました。
僕は、今の時代に会った、そして、自分が苦しんでいるのなら、子や孫に同じ思いをさせないような、解決策を見出すことも必要ではないかと思います。
もちろん、ご先祖様のご供養の方法などは、簡単に割り切れるものではないと思います。
そんな時に、忘れないでほしいのは、ご先祖様は子孫を見守ってくれる存在であって、苦しめたり、バチを与えたりする存在ではないのだということです。
ご先祖様のことを忘れず、感謝し、大事に思い、ご供養する気持ちを忘れないことが大切ではないでしょうか。
今日のJAZZ
ピアニスト、ビル・エヴァンスの《My Foolish Heart》をB.G.M.にブログを書いています。
エヴァンスを形容する時に「エレガント」「美しい」「優しい」など多々ありますが、この演奏はどれも兼ね備えているのではないかと思います。
15年程前のジャズを聴き始めた初期のころに購入したコンピレーション・アルバムに入っていて、エヴァンスの演奏とも知らずに何度も聴いていたのを思い出します。
相続セミナー・説明会情報
自主開催相続セミナー
【終活・遺言書セミナー】「エンディング・ノートと遺言書の上手な活用 ~幸せな相続の準備~」
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開催場所:沖縄県教職員共済会館「八汐荘」(那覇市松尾1-6-1)
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城間 恒浩
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