終活に取り組んでいる方へ
昨今では「終活」の言葉が一般的になり、ご高齢者を中心に浸透してきているように感じられます。
ただ、「なぜ終活に取り組むのか?」「終活の本当の意味とは?」「何をしたらいいのか?」「何から手を付けたらいいのか?」といった声は聞こえてきます。
また、エンディング・ノートの選び方や書き方でお困りの方もいらっしゃるようです。
さらに、エンディング・ノートと遺言書を混同している方もいらっしゃるようです。
このページでは終活に取り組んでいらっしゃる方に知ってもらいたいことをまとめました。
写真は公益財団法人沖縄県メモリアル整備協会オリジナル「終活ノート」(800円)。シンプルで使い勝手がいいです。
終活とは?
僕は2016年3月から本格的に行政書士として活動しておりますが、一貫して遺言と相続を専門としています。
行政書士としてできる仕事の中で、僕が経験し、知識があったのが相続・遺言書だったからです。
遺言や相続に関して、勉強し、ブログ、SNS、セミナーやラジオ番組などで発信していると、遺言や相続が「終活」の一環であることを肌で感じ始め、深く学んでいます。
終活とは、インターネット上の辞書ウィキペディアでは次の通り説明されています。
終活(しゅうかつ)とは「人生の終わりのための活動」の略。人間が自らの死を意識して、人生の最期を迎えるための様々な準備や、そこに向けた人生の総括を意味する言葉である。
(ウィキペディアより引用)
終活は、自分の死を意識して準備することであることがわかります。
しかし、僕は「なぜ、多くの方が取り組んでいるのか?」といった疑問もありながら、終活について学んでいました。
人生の終盤の活動を意味する「終活」の言葉が各種メディアで語られるようになったのが2009年頃で、当時のとある週刊誌の編集長が名付けたそうです。
2012年には新語・流行語大賞のトップ10にも選出されるほど、終活は熱を帯びてきます。
現在でも雑誌、TVやネット上で「終活」の文字を見かけることは多く、映画の題材にもなったりしていますね。
終活は、少子高齢化を背景に、団塊の世代を中心に自分のことは自分で決める、人生の終盤または死後に家族に迷惑をかけたくないという思いから盛んになったと言われています。
ただ、字面から暗いイメージのある終活ですが、とあるきっかけから、決して後ろ向きな活動ではなく、積極的で前向きな活動であることがわかりました。
そのきっかけと言うのが、僕の知り合いで、相続セミナーなどで一緒に登壇した「公益財団法人沖縄県メモリアル整備協会」の職員で、終活カウンセラー上級の東恩納寛寿さんがセミナーでお話しされる終活の意義を聞いた時に、なぜ多くの方が終活に取り組んでいるのかが腑に落ちました。
終活とは
(公益財団法人沖縄県メモリアル整備協会 東恩納寛寿氏(終活カウンセラー上級)の講演スライドより)
人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ、今をよりよく自分らしく生きる活動のこと
終活は、将来に向けて自分らしく、よりよく生きる活動の事なのです。
決して、後ろ向きの活動ではなく、人生をよりよく生きるための積極的な活動なのです。
だからこそ、多くの人が取り組んでいるのですね。
終活では、生前整理、介護、終末期医療、葬儀、お墓、相続や遺言のことを自分はどうしたいのかを考え、記録し、家族に伝えることが必要となります。
僕の専門とする相続や遺言も終活の一環です。
遺言書を書きたいという方は、自分の死後、家族に迷惑をかけたくない、自分の財産は自分でどうするか決めておきたい、思い残すことが無いように準備をしたい、と前向きに考えていらっしゃいます。
そして、遺言書を作成した方が笑顔で「これで安心です。スッキリした。」とおっしゃられることがほとんどです。
中には涙を流して、気になっていたことが解決したことを喜ぶ方もいらっしゃいます。
僕の仕事は、お客様の人生の終盤のご活動をお手伝いしているわけで、とても大きな責任を感じます。
僕を信じ、頼ってくださる方の心の負担を少しでも解決できるように、これからもしっかり負託にお答えしたいと思います。
終活ですべきこと
人生の終盤に向けての活動ですから、全てが終活になるとは思いますが、特に終活で考えられるのは・・・
- 元気なうちに:断捨離、自分史の作成、エンディング・ノートの作成
- 体のこと:介護、看護、終末期医療
- 財産の承継:相続、遺言書
- 亡くなった後:葬儀、墓、供養の方法
大きく分けるとこんなところでしょうか。
実際に終活を始めると、現在の自分の状況を健康状態、財産状況、家族関係、友人関係、仕事面から把握することに始まります。
そうすると自分の現在の状況を書き出したりして記録する必要が出てきます。
そんな時にはエンディング・ノートが便利です。
書店やネット上では、沢山のエンディングノートを見かけます。
エンディング・ノートを選ぶときの注意点としては、なるべく薄めのエンディング・ノートを購入して、徹底的に記入し、完成させることをお勧めします。
あまり気合が入りすぎて分厚いものや難解なエンディング・ノートを選ぶと気持ちがなえてしまい、挫折しかねないからです。
自分の出生から現在までの履歴をまとめたり、財産目録(不動産、預貯金、現金、株式、ゴルフ会員権、美術品、骨董品、宝飾品、インターネットバンキングの利用有無、ネット投資の利用有無、貸金庫の有無、債権。債務など)、健康状況に鑑み通院記録や服薬記録、友人関係のリスト、仕事関係者のリスト、家族親戚関係のリストなどを作成したりして何らかの形で自分のことを洗い出します。
そして、自分がもしもの時に備えて、介護や看護、終末期医療、余命宣告などをどうしてほしいのか、葬儀、お墓、仏壇やご供養はどのようにしてほしいのか、相続はどのように考えるのか、遺言書を書く必要があるのかなどを考えることも終活の大事な活動です。
こう考えると終活も様々なことを考えて、やるべきこと、準備すべきこと、家族に理解してもらうことなど沢山ありますね。
だとすれば、元気なうちに早めに着手したほうがいいかもしれません。
40代や50代から始める方がいるのもうなずけます。
エンディング・ノートと
遺言書の違いと役割
一般の方には、エンディング・ノートと遺言書をごちゃ混ぜにして考えていらっしゃる方がいますが、両者は違うものです。
まず、エンディング・ノートには基本情報(生年月日、性別、家族関係)、自分の簡単な出生からの生い立ち、財産(不動産、預貯金、株式、動産など)、貸金庫の有無、加入している保険、ネット・バンキング、ネット・トレード、利用しているSNS、ネット上のIDやパスワード、介護をどうしたいのか、終末期医療の希望、葬儀の方法、ご供養の方法、遺言書の有無、親しい友人のリストなどをまとめるものです。
一方で、遺言書は自分の財産を誰に、どのくらいの割合で遺したいのか、ということを中心に書き遺します。
言書とエンディング・ノートの最大の違いは「法的拘束力」です。
遺言書には、法的拘束力があります。
エンディング・ノートには法的拘束力はありません。
わかりいただけましたでしょうか?
遺言書とエンディング・ノートはは違うものなのです。
両方を混同して考えている方もいるようですので、お気を付けください。
以前にSNSで「私は相続の準備として、エンディング・ノートを書いているから大丈夫!」といった発信を見かけましたが、遺言書も併せて書いていただけるといいですね。
僕は終活に取り組む方はエンディング・ノートで情報を整理し、遺言書を書くとスムーズだと思っています。
両方の特徴を知って、うまく活用してください。
終活の一環としての
相続と遺言
僕の仕事も終活の一環である相続や遺言も大事なところです。
様々なイベントで相談員を務めることがありますが、ご相談者の皆さんには、終活に取り組むとともに相続のことは早めに準備することをお勧めしています。
「まだ元気だから大丈夫」という方には、「自分の健康を願う気持ちはわかりますが、過信は禁物ですし、人はいつどうなるかわかりません。特にご年配者は気を付けるべきです。」と伝えました。
「私には財産がないから大丈夫」という方には、「家庭裁判所で争われている遺産分割事件の約78%が遺産総額5,000万円未満の普通のご家庭です。中には100万円程の財産を巡って争っている方もいます。財産の多寡は問題ではないのです。財産がない、という方程問題を引き起こすんですよ。」とお知らせしました。
何も脅かしているわけではありません。
僕がこれまでご相談を受けてきた経験や世の中の相続を取り巻く状況からお知らせしているのです。
沖縄の方は相続に関して言うと当事者意識が低く、のんびりしているように感じます。
自分の健康を過信し、準備を先延ばしにしたことで、家族が相続争いに巻き込まれないことを願います。
自分の築き上げた財産もしくは先祖代々続く財産をどのように次の世代に承継するかを考えることは、ご家族のためでもありますが、自分のためでもあると思います。
相続のことを考えると不安になったり、心配したり、落ち着かなかったりするかたも多いようです。
僕のお客様もそういった方が多い。
でも、相続のことを考え、家族が争わないように、家族が煩わしい想いをしないようにとしっかりと準備をすることで、人生の終盤の活動で、落ち着いた人生を送れます。
相続においては、遺言書を書くことが終活の一環となると思います。
遺言書を書いた皆さんは口々におっしゃります。
「安心しました。」
そうして、人生の最後まで楽しく、充実した日々を送れるのではないかと思います。
終活に取り組む皆さんには、相続のことも真剣に考え遺言書を書いてもらいたいと思います。