【相続で困らないために】知っておきたい相続手続きの流れと専門家活用術。

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相続手続きの大まかな流れ

僕は相続・遺言書専門の行政書士として、日々、ご相談を承っております。

相続手続きにおいては、誰かがお亡くなりになると、ご遺族(家族)からご相談をお受けしますが、何から手を付けたらいいのか途方に暮れてらっしゃる方も多いです。
大事なご家族を亡くして、すべきことや考えることが多く、気持ちの整理がつかない中で、相続のことも手を付けないといけないのは、大変だと思います。

多くの方が不安に思われるようです。
「家族が亡くなったのだけど、何をしたらいいのかわかりません」との漠然としたご相談も多いのです。

そこで、今日は、相続手続きのヒントになる記事を書かせていただきました。

被相続人(故人)が、土地と自宅建物の不動産、預貯金口座、株式、自動車、現金、死亡退職金等があったとします。
預貯金口座は凍結されて引き出しができない状況だとしましょう。

僕がご相談者に説明する相続手続きの手順は、以下の通りです。

1.遺言書の有無の確認

被相続人が大事なものを保管していた場所に遺言書がないかの確認すること。
公正証書遺言を作成していたとすれば、公証人役場で検索可能なこと。
法務局で自筆証書遺言を保管していないかを確認することが出来ること。

公正証書遺言及び法務局に保管している自筆証書遺言以外の遺言書であれば、家庭裁判所での開封および検認手続きが必要になること。
遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議をして、分割内容に全員が同意したら遺産分割協議書を作成すること。

遺言書があり、遺言執行者が指定されているようでしたら、執行者により遺言の内容を実現(手続き)されます。
具体的に言えば、不動産の相続登記、金融機関(銀行や証券会社)の相続手続きや自動車の名義変更手続きなど。

遺言執行者については、次のブログが参考になります。

2.相続人の確認

被相続人の出生から死亡までの戸籍、改正原戸籍、除籍などと相続人の戸籍・住民票を取得すること。
相続人が誰(直系卑属、直系尊属または兄弟姉妹)になるかによって、取得する範囲も変わってくること。

相続人を確定することは相続手続きで、とても重要なことであること及び法務局に法定相続情報一覧図の交付申請を行うことで、以後の相続手続きがスムーズになること。

「法定相続情報」の作成は強くお勧めしていますが、次のブログが参考になります。

3.財産の確認

(1)不動産
不動産は全部事項証明書(登記簿)を取得すること。
全部事項証明書(登記簿)を取得するのに参考となるのは市区町村の発行する固定資産評価証明書であること。
固定資産評価証明書に記載されている不動産(土地や建物)の情報を基に登記簿を取得すること。
なお、年に一度届く、固定資産税納入通知書の土地や家屋の明細には、自治体によっては記載されていない不動産(墓地、課税されない物件など)もありますので、必ず固定資産評価証明書を取得すること。
また、固定資産評価額が「0円」となっている土地(墓地など)については周辺宅地等の近傍単価を記載すること。
近傍単価は、後々の不動産の相続登記に必要となります。

(2)預貯金
通帳やキャッシュカードを探すこと。
主たる金融機関に口座開設していないかを確認する。
全く手掛かりがないようでしたら沖縄県内でしたら、沖縄銀行、琉球銀行、沖縄海邦銀行、ゆうちょ銀行、沖縄労働金庫、JAバンク及びコザ信用金庫を全て調査すること。
通帳があれば、記帳をすればいいですし、ないようなら被相続人との関係のわかる戸籍関係を準備し、相続人であることを明示し、口座情報の開示請求や残高証明・取引記録を取得すること。

(3)株式・投資信託・暗号資産・金など
証券会社に口座開設し株式投資や投資信託などをしていなかったか?
また、非上場株式を保有してはいないだろうか?
証券会社からの取引報告や株主総会の開催通知などの案内や書面などが残っていないか、手がかりが得られること。
また、最近ではネット・バンキングやネット・トレーディングなどを利用されている方もいるようなので、場合によってはそちらの対応も必要であること。
さらに、昨今はビットコインなどの暗号資産を保有している方もいるかと思いますが、被相続人のスマホやPC上の情報が不可欠になること。
また、安定資産である金を所有している方もいるであろうこと。
ネット・トレーディングなどは早めの対応をしないと大きな損失が出ることもあること。
ネットバンキングなどはスマートフォンなどが手がかりになることがあるので、スマホの解約は手続きが完了してから行うことが望ましいこと。

(4)自動車
車検証を確認し、所有者をは誰かを確認する。
被相続人(故人)がローンで購入した車の場合には、所有者は販売会社となっていること。
また、リースの自動車である可能性もあること。

(5)骨董品・美術品・宝飾品
骨董品などは評価に困ることもあるかもしれませんが、高価なものがありそうなときにはしかるべきところで評価してもらうことも必要であること。

(6)現金
自宅の金庫や金融機関の貸金庫に現金が保管されていることも考えられますので、ご確認すること。
被相続人の亡くなる直前に銀行から引き出したお金が残っている場合には、その残金も相続財産となること及び相続税の課税関係では、問題になることが多いため必ず申告に含めること。

(7)死亡退職金
故人が現役の経営者や勤め人などであった場合には、会社から退職金が出る場合には、死亡退職金も遺産となりますので、相続人間で遺産分割の話し合いが必要となります。

(8)小規模企業共済金
故人が小規模企業や個人事業主であった場合、独立行政法人中小企業基盤整備機構の運用する小規模企業共済制度の退職金制度に加入していないかを確認すること。
共催契約者が死亡した場合には、遺族に共済金が支払われることになるが、受取人の遺族は、民法上の法定相続人と異なっているので、中小企業基盤整備機構のサイトを確認すること

(9)死亡保険金など
被相続人(故人)がご自身を被保険者とする死亡保険などに加入していた場合には、受取人に指定されていたものに保険金が支払われること。
ここで注意したいのは、死亡保険金は受取人の固有の財産となるので、遺産分割の対象にはならないこと。
受取人に指定されている方は速やかに手続きを進めること。
適正な申請がされれば、保険会社にもよりますが、2~3日以内には支払いがされます。
なお、故人の生前の入院費用などを補填する給付金などが死後に支払われる場合などには、その給付金も遺産分割の対象になること。

4.負債の確認

借り入れがないかを確認すること。
通帳から定期的に引き落としがないか、借用書がないか、金融機関からの通知書がないかを確認すること。
銀行などの金融機関であれば不動産が担保になっていることもあるので、全部事項証明書(登記簿)を確認の上、担保設定されているなら債権者に残金がないかを確認すること。

5.財産目録の作成

相続財産や負債が判明したら、財産目録を作成すること。
財産状況が視覚的に分かると、遺産分割協議もしやすくなること。

6.相続の選択

相続が開始してから3か月以内の熟慮期間中に相続について、承認するか放棄をするかを検討すること。

(1)単純承認
相続することを決めたのであれば特に何ら手続きをしなくとも3か月経過すると相続を承認したことになること。
また、3か月以内でも財産の一部または全部を処分した場合も同じであること。

(2)限定承認
プラスの財産よりもマイナスの財産(負債)がはっきりしない時やマイナスの財産が大きな場合に、プラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を相続する手続きであること。
どうしても相続したい財産(居住用不動産など)がある場合に、活用されますが、手続きが複雑なため弁護士に相談すること。
限定承認の場合には、相続人全員が共同で行う必要があること。

(3)相続放棄
遺産状況を確認した結果、負債が多いため相続放棄したいなら3か月以内に家庭裁判所で手続きすること。
相続放棄をお考えの場合には、速やかに手続きをとることをお勧めしますが、事前に司法書士や弁護士に相談する。

7.遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成

相続人及び相続財産が確定したら、相続人全員で遺産の分割方法を話し合う、遺産分割協議を行うこと。
相続人全員で行う必要があること。
相続人に未成年、認知症、精神疾患で意思判断能力がない者、県外・海外在住者、音信不通・行方不明者がいる場合でも除外できないことや該当する相続人がいる場合の対応方法があること。

遺産分割協議の際には、現実的な対応、二次相続(夫が亡くなった後に妻が亡くなるケースなど)や相続税を考慮した遺産分割協議が必要であること。
遺産分割協議が整う前に、相続税のシミュレーションをすべきこと。

相続人全員が遺産分割に合意したら「遺産分割協議書」を作成すること。
遺産分割協議書作成の際の注意事項として、その後の相続手続きに必要な項目や後日判明した遺産の取得方法についても記載することがあること。

遺産分割協議書の作成については、次のブログが参考になります。

8.準確定申告

被相続人が個人事業主として事業をしていたのであれば、4か月以内に準確定申告が必要なこと。

9.相続税の申告・納付

相続税が課税される遺産がある場合には、相続開始後10か月以内に相続税の申告・納付が必要なこと。

相続手続の流れ 概要

相続手続きのご相談はお近くの行政書士へ!

相続手続きの概要を解説しましたが、このブログを読んでも一般の方がすんなりと手続きをすることは難しいと感じたかもしれません。
複雑な書類作成が必要なこともありますし、時間も要します。

また、金融機関の相続手続きにおいては、それぞれ違うルールーがあるので、手続きを進めるのには忍耐力も必要です。
お仕事をしながらでは、平日に時間が取れずになかなか手続きが進まないこともあるでしょう。

ただ、手続きを先延ばしにしていると困ったことや遺産の有効活用ができないということも出てきますので、早目の対応がよろしいかと思います。
特に不動産の相続登記については、令和6年(2024年)4月から義務化されており、原則として、相続開始から3年以内に相続登記を完了する必要があります。
相続登記の手続きをする以前に相続人の調査や相続財産の調査が必要なことはこのブログで説明した通りです。

相続手続きについて、何をすべきか分かったら、あとは行動するのみです。
しかし、行動できないまたはわからないということなら、お近くの専門家に協力を仰いでくださいね。

手続き内容によっては、扱える士業は限定されますが、頼れる街の法律家である行政書士は、相続に関する手続きの流れや手続きのきっかけをを知るための相談相手として最適だと思います。

まずはお近くの行政書士に相談してください。

当事務所では、必要に応じ、司法書士や税理士と連携し、当事務所が窓口となりワンストップで対応いたします。

行政書士ジャジー総合法務事務所 看板の前でジャジー 20201231
行政書士ジャジー総合法務事務所の看板の前でジャジー。 
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城間 恒浩

代表者行政書士ジャジー総合法務事務所
沖縄県那覇市松尾の遺言・相続関係専門のJAZZ好きの行政書士。 2010年に父親と祖母を同じ年に亡くし2度の相続を経験。 その時に感じたのが「気軽に相続や遺言に関する相談先があったらいいのになぁ」ということ。 そんなことから、身近な街の法律家、遺言・相続専門の行政書士として、自分の経験や学んだ知識で相続でお困りの方のご相談にのっています。 行政書士は遺産分割協議書や遺言書作成などの相続関係のお手伝いもできるのです。 1971年9月生。国際協力関係の仕事に約11年間、社会保険労務士の事務所で約10年勤務後、2015年10月より現職。 エクスマ塾67期。エクスマ・エヴァンジェリスト15期。エクスマ学院1期。 JAZZが大好き。好きな場所は、沖縄とニューヨーク。 2016年9月よりラジオ番組パーソナリティーとしても活躍中。お気軽に「ジャジー」と声をかけてください!

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