故人が加入していた死亡保険金は誰が受け取るのか?


JAZZ好きの行政書士城間恒浩(@jazzyshiroma)です。
僕は沖縄県那覇市松尾で遺言相続専門の行政書士として、遺言書や遺産分割協議書の作成、相続や終活のご相談を承っております。
これまで関係した遺言書・遺産分割協議書・贈与契約書等の作成は200件以上、相続相談は400件以上となっており、相続や遺言のことでお困りの方がいることを日々感じ、「相続は準備させすれば、ご本人もご家族も幸せになれる」ことを実務を通じて確信しています。
このブログでは、実務を通じて感じる相続や遺言の話を中心に書いています。
また、たまに相続や遺言以外の好きなジャズのこと、日常や僕の想い・考えも書いていますよ。
本ブログが少しでもお役に立ちましたら嬉しいです。行政書士ジャジー総合法務事務所 バナー広告 20210804

相続時の生命保険金の受取人

相続手続きのお手伝いをさせて頂いていると、「被相続人(故人)が生命保険に加入していたのだが、保険金を受け取るにはどうしたらいいだろうか?」といったご相談もあります。

生命保険はご自身の老後資金のための貯蓄型の保険、遺された家族の生活保障、相続税の支払い資金準備、相続税の節税、特定の人に財産を承継したい、といったようなことに対応するために相続対策などでも一般的な方法になっていますね。

一方で、「被保険者が死亡したら誰が受取人になるか?」「保険金は相続人で分け合う必要があるのか?」と言ったことについては、わかりにくいこともあるかもしれません。

本日は、生命保険(死亡保険金)の受取人(保険金請求権を取得する者)は誰になるか?といった視点で記事にします。

なお、契約者は当該保険を生命保険会社(保険者)と契約した者、被保険者が保険の対象となる者、受取人は保険金を受け取る者です。

ちなみに、死亡保険の受取人として指定できる範囲は、原則的には配偶者(法律婚)または2親等以内の血縁者(1親等:両親、子/2親等:祖父母、兄弟姉妹、孫)となります。
2親等以内の血縁者を受取人に指定できない場合には、保険会社によってではありますが、3親等内の血縁者(叔父、叔母、甥、姪)を受取人に指定することが可能な場合もあるようですので、ご自身のご加入の保険会社にご確認ください。
また、内縁関係の相手方を受取人にすることも条件を満たせば可能な場合もあるようなので、保険会社にご確認ください。

保険契約において、契約者、被保険者と受取人は、様々な組み合わせが考えられますが、本日は、契約者及び被保険者を被相続人(故人)に固定し、受取人(主に相続人とします)が変わるパターンについて記載します。

(前提条件)
契約者:被相続人(故人)
被保険者:被相続人(故人)
受取人:以下の6パターン

1.受取人:特定の相続人(遺族のうち相続する権利を有する者)

契約者が、受取人として、特定の相続人を指定している場合には、その相続人が受け取ることになります。
死亡保険金は受取人として指定された特定の相続人の固有の権利であり、その者に帰属する財産となりまので、その保険金は相続財産とはならず、他の相続人との間での遺産分割の対象にはなりません。

例えば、受取人を被相続人(故人)の長男(相続人のうちの一人)としていた場合には、長男が受取人となり、他の相続人は保険金は受け取れません。

また、仮に長男が被相続人の財産について、相続放棄をしたとしても、死亡保険金は受け取ることができます。
保険金は受取の指定を受けた者の固有の財産となるからです。

なお、相続人が受け取った保険金が多額になるなど、特段の事情がある場合には、保険金が特別受益となり、遺産分割の際に相続財産の価額に加えて具体的相続分を計算するなどの対応が必要になることもあります。
特定の相続人が多大な保険金を受け取ることで、他の相続人との間で不公平な状況となることが考えられるからです。

2.受取人:複数の特定の相続人(遺族のうち相続する権利を有する者)

契約者が、受取人として、複数の相続人を指定している場合には、保険金の受取割合も指定されているはずなので、その割合に応じて指定された受取人が保険金を受け取れます。

例えば、契約者が、受取人とその割合を被相続人(故人)の妻2分の1、長女2分の1としている場合には、その割合で保険金を相続人の固有の財産として受け取れるわけです。
この場合も指定された受取人以外の他の相続人は保険金は受け取れません。
また、仮に妻および長女が被相続人の財産について、相続放棄したとしても妻および長女は保険金を受け取ることが可能です。

なお、保険金については「1.受取人:特定の相続人(遺族のうち相続する権利を有する者)」と同様に特別受益の問題には注意を要します。

3.受取人:(法定)相続人(遺族のうち相続する権利を有する者)

契約者が、受取人を特定の者(個人)を指定するのではなく、「(法定)相続人」としている場合には、相続人全員(配偶者+法定相続順位の上位の者)が法定の相続分(割合)で受け取ることができます。

例えば、法定相続人が配偶者(妻)と第一順位の相続人(子)2名だったとすると、妻が2分の1、子供がそれぞれ4分の1を受け取れることになります。
この場合も相続人固有の財産として、相続財産とはならないので、遺産分割協議の対象とはなりません。
また、相続放棄した場合でも保険金の受取には影響はありません。

なお、受取人を(法定)相続人としていた場合に、保険金は法定相続割合で受け取るべきとした最高裁判所の判例(最高裁判所第二小法廷平成6年7月18日)があります。

4.受取人:受取人が被保険者よりも先に死亡している場合

受取人が、契約者または被保険者よりも先に死亡している場合もあるかもしれません。
本来なら、その時点で契約者が受取人を変更するといいのですが、何らかの理由で変更できていないこともあるかもしれません。

この場合には、受取人は保険法第46条の規定により、死亡した保険金受取人の法定相続人となり、受け取る割合は全ての相続人が均等となります

民法抜粋
(保険金受取人の死亡)
第四十六条 保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。

注意すべきは、受取人は当初契約者が指定していた「死亡した保険金受取人」の法定相続人となることです。

例えば、契約者および被保険者が同一の死亡保険で、受取人を長男と指定していたところ、その長男が既に死亡していた時には、長男の法定相続人である配偶者(妻)と第一順位の相続人(子)2名だったとすると、妻と子供2名が各3分の1の割合で受け取る権利を有することとなります。

なお、このケースでは、保険金請求権は分割債権(金銭債権)となることから民法427条により、債権者(相続人)が均等の割合で権利を取得することとなり、受取人が死亡により空白になっていることから、同条で定める「別段の意思表示がないとき」に当てはまるのです。

民法抜粋
(分割債権及び分割債務)
第427条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

また、保険法(第44条)受取人は遺言書でも変更可能とはなっていますが、遺言で変更するよりも保険会社で受取人変更の手続きをとることがよろしいかと思います。

5.受取人:指定なし

保険会社は契約締結時またはその後に死亡保険金などの受取人を具体的に指定をするように契約者に勧めているでしょうから、受取人の指定のない契約は少なくなっているとは思います。

それでも受取人が指定されて得いない場合には、優先されるのは保険約款の定めとなり、各保険会社が定めている受取人が保険金を受け取ることになります。

なお、保険約款にて「保険金の受取人の指定がない場合には、法定相続人を受取人とする」といった趣旨の定めがあり、相続人が受取人となる場合には、相続人固有の財産となり、相続人が相続放棄を考えている時でも保険金は受け取れます。

可能であれば、受取人を指定していない場合には、誰かしらを指定することが望ましいかと思います。

6.受取人:被相続人(故人)

将来の老後資金などのために掛け捨て型の保険ではなく、貯蓄型の保険(養老保険など)に加入する方もいらっしゃると思います。
その場合、契約者、被保険者と受取人が同じということもあるでしょう。

貯蓄型の保険で、契約者、被相続人かつ受取人である被相続人が亡くなった状況であれば、保険約款で受取人が指定されているのであれば、その通りに受取人が決まることになります。
通常は、法定相続人が受取人となるような定めが多いようです。

この場合には、受取人固有の財産となり、受取人が相続人であったとして、被相続人の相続について放棄したとしても保険金は受取可能です。

一方で、保険約款に定めのない場合には、保険法第46条法定相続人が受取人として死亡保険金(請求権)を相続することになり、保険金は相続財産となります。

相続財産となるとすると、保険金は遺産分割協議の対象となりますが、この点については、状況によって取り扱いが変わることもありますので、ご注意ください。

また、このケースによると保険金の受取人となる相続人は、被相続人の相続について放棄してしまうと、死亡保険金を請求する権利を放棄することになり、保険金も受け取ることが、ご注意ください。

保険証券

被相続人(故人)が被保険者となっていた保険金の受け取りに関して、概要示しましたが、相続放棄などの難しい判断が必要なこともあるので、その場合には、保険約款の確認、専門家への相談をしてくださいね。

また、死亡保険金などは、税法上はみなし相続財産などとして、相続税の課税の可能性はありますので、お気を付けください。
この点は別の機会に記事にしたいと思います。

今日のJAZZ

トランペッター、チェット・ベイカーの《Alone Together》をB.G.M.にブログを書いています。
チェットの哀愁漂う演奏は真骨頂ですね。
そして、ピアノはビル・エヴァンス。
寂しげで、悲し気で、物憂げな演奏が心にしみます。

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城間 恒浩

代表者行政書士ジャジー総合法務事務所
沖縄県那覇市松尾の遺言・相続関係専門のJAZZ好きの行政書士。 2010年に父親と祖母を同じ年に亡くし2度の相続を経験。 その時に感じたのが「気軽に相続や遺言に関する相談先があったらいいのになぁ」ということ。 そんなことから、身近な街の法律家、遺言・相続専門の行政書士として、自分の経験や学んだ知識で相続でお困りの方のご相談にのっています。 行政書士は遺産分割協議書や遺言書作成などの相続関係のお手伝いもできるのです。 1971年9月生。国際協力関係の仕事に約11年間、社会保険労務士の事務所で約10年勤務後、2015年10月より現職。 エクスマ塾67期。エクスマ・エヴァンジェリスト15期。エクスマ学院1期。 JAZZが大好き。好きな場所は、沖縄とニューヨーク。 2016年9月よりラジオ番組パーソナリティーとしても活躍中。お気軽に「ジャジー」と声をかけてください!

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