緊急時に作成する遺言書の作成要件と気を付けるべきこと。


JAZZ好きの行政書士城間恒浩(@jazzyshiroma)です。
僕は沖縄県那覇市松尾で遺言相続専門の行政書士として、遺言書や遺産分割協議書の作成、相続や終活のご相談を承っております。
これまで関係した遺言書・遺産分割協議書・贈与契約書等の作成は200件以上、相続相談は400件以上となっており、相続や遺言のことでお困りの方がいることを日々感じ、「相続は準備させすれば、ご本人もご家族も幸せになれる」ことを実務を通じて確信しています。
このブログでは、実務を通じて感じる相続や遺言の話を中心に書いています。
また、たまに相続や遺言以外の好きなジャズのこと、日常や僕の想い・考えを書いています。
本ブログが少しでもお役に立ちましたら幸いです。行政書士ジャジー総合法務事務所 バナー広告 20210804

遺言書の種類

遺言書の基本的なことと命の危険を感じた時に作成する遺言書について、解説します。
まずは、遺言書の種類を簡単に解説します。

相続セミナー資料「遺言書の方式について」

相続セミナー資料「遺言書の方式について」

【遺言書の方式・種類】
1.普通方式
(1)自筆証書遺言
全て自らが書いて作成する。平成31年1月13日からは財産目録はワープロ等での作成が可能となってます。
(2)公正証書遺言
公証人に作成してもらう方式。証人2名が立ち会う。
(3)秘密証書遺言
内容を秘密にするという趣旨があります。特徴は代筆可能でワープロでもOK。公証人、証人2名立会いのもと封緘。公証人と証人は内容までは確認しません。

2.特別方式 ※めったにないものです
(1)隔絶地遺言
①一般隔絶地遺言
伝染病などで行政処分により交通を絶たれ隔離されている方(や刑務所に入っている方など)が作成する遺言書です。
一般隔絶地遺言は証人として、警察官1名と他1名の立会いが必要です。
②船舶隔絶地遺言
船での仕事をしている方や航海中の方が作る遺言で、証人として船長または事務員と他に証人2名以上の立ち合いが必要になります。
(2)危急時遺言
①一般危急時遺言
病気その他の理由で死亡の危急がが迫っているときに作成しする遺言で、証人3名以上の立会いの下に遺言者が口授し、証人の一人が筆記し遺言書を作成し、証人が署名捺印することで作成します。
なお、作成した遺言書は遺言の日から20日以内に家庭裁判所で「確認の審判」を受けなければ効力が生じません。
②難船危急時遺言
船舶が遭難し、乗船している者に死の危険が迫っているときに作成する遺言書で、証人2名以上の立ち合いの下で遺言者が口頭で遺言し、証人がその趣旨を筆記し、署名し、押印し作成する。
なお、作成した遺言書は遅滞なく家庭裁判所で「確認の審判」を受けなければ効力が生じません。

命の危険を感じた時に作成する危急時遺言

上記で説明したとおり遺言書には大きく分けて「普通方式」と「特別方式」がありますが、何かしらの事情で命の危険(民法上は「命の危急」とされています)を感じた時に緊急で作成する遺言書の一つが危急時遺言です。

何かしらの事情というのは、病気、事故や船舶が遭難しているよう緊急事態にある状況です。
めったに作成されることはなく、1年間に全国で100件ほどのようです。

僕もこれまで2件の作成に証人及び筆記者として経験しただけです。
これまで僕が経験した案件は2件とも入院している方からのご依頼でした。

個人情報にかかわることなので、詳細は書けませんが、この状況で最適な遺言書である「一般危急時遺言」をお客様にご提案し、完成させました。

一般危急時遺言の作成の法的要件は次の通りです。

【一般危急時遺言法的要件】
1.遺言者は証人3人以上の前で遺言の趣旨を口授する
2.証人の一人が遺言者の遺言の趣旨の口授を筆記する
3.遺言者の遺言の趣旨の口授を受けたものは筆記した内容を遺言者と証人に読み聞かせる
4.筆記した内容が正確であることを遺言者と証人が認めたら筆記した文書に署名・捺印する
5.作成された一般危急時遺言は、遺言の日から20日以内に家庭裁判所での確認が必要となる(効力を生じない)ので請求する
6.遺言者が普通方式の遺言をできるようになった時から6か月間経過した時(存命し、普通方式の遺言ができる場合)には危急時遺言書は無効となる
7.遺言者が亡くなり相続が開始した場合には、一般危急時遺言は家庭裁判所での遺言書の検認手続きが必要である

また、当方が関り、一般危急時遺言を作成した上で感じた注意点を次に記します。

【危急時遺言作成上の注意点】
1.緊急性は高いものの情報は裏付けをとる
遺言者の氏名、生年月日、住所、本籍などは運転免許証や保険証などで確認する。
遺言書に記載する財産の全部事項証明書(登記簿)や通帳口座の情報を確認する。
相続人となるものを確認する。
相続させる者や遺贈する者の氏名、生年月日、続柄を正確に確認する。

2.証人の選任
証人は未成年者、推定相続人、署名できないもの、口授が聞き取れないもの、口授を理解できないものなどはなることができません。
また、めったにない方式であり、厳格な手続きが求められるので、報酬が発生するとしても遺言書作成の専門家である行政書士、弁護士その他の士業に依頼するのが望ましいでしょう。
緊急性が高いときには、医師や看護師などにお願いすることも選択肢の一つです。
証人には家庭裁判所の確認などで調査官との面談などもありますので、ご協力してもらえる方に依頼することが望ましいでしょう。

3.遺言書の作成環境
遺言者が口授する場所は密室が望ましいです。
遺言者と証人以外は入れないこと。
特に推定相続人や利害関係者が同席していると、後々、その遺言書の真意性が問われることとなります。
病院や施設などで作成する場合には、個室を借りられるとよいと思います。

入院中の高齢者 病人

めったに取り扱いのない危急時遺言の法的要件と実際に経験した上で、感じたことを書かせてもらいました。

このような状況になった時でも遺言書の作成を望む方がいれば、作成できる方法はあります。
ただ、死の危険を感じた方が作成する遺言書ですので、確実かつ迅速な手続きが求められます。
専門家に依頼することが望ましいでしょう。

危急時遺言は、遺言者が死の間際まで、家族のことを思い作成する遺言書です。
思いが伝わらないわけがありません。

しかし、現在猛威を振るう新型コロナウイルスの感染者が遺言書を作成するのはかなり困難ではないかと考えます。
証人が病室に入ることは難しいです。
また、ただでさえひっ迫している医療現場にご負担をかけてしまう可能性は高いですし、緊張状態を保っていますから遺言書を作成したいといっても対応できないことはあるかもしれません。

遺言書の作成は国民の権利ですが、制限される状況も出てくるでしょう。

だからこそ、僕は思うのです。
遺言書は元気なうちに、できるだけ早く作成し、万が一に備えてほしいのです。

新型コロナウイルスなどの感染症に限らず、事故や事件に巻き込まれることもありますから、自分の命がいつまでも安心できると考えることはできないのではないかと思います。

また、思わぬことで命を失うことはないにしても、晩年はゆっくりと穏やかに過ごしてほしいと思います。
穏やかに家族に見守られながら、旅立ってほしいのです。

ですから、しっかりとした準備が必要なのだと思います。

被相続人と相続人。

今日のJAZZ

ピアニスト、ビル・エヴァンスの《My Romance》を紹介します。
エヴァンスのファースト・トリオが1961年にニューヨークの老舗ジャズ・クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライブを収録した演奏です。
エヴァンスは《My Romance》を度々演奏していたそうですが、スコット・ラファロ(ベース)とポール・モチアン(ドラム)のトリオでの演奏は華麗で気持ちがいいです。
ラファロはこの演奏の11日後に交通事故で亡くなり、エヴァンスのファースト・トリオは突然の終焉を迎えます。
盟友ラファロを失ったエヴァンスの心情たるやいかほどだったでしょうか・・・
実際にしばらく演奏活動から遠ざかったそうです。
最近、お笑いコンビ「ダチョウ倶楽部」のメンバー上島竜兵さんがお亡くなりになりました。
あの3人での芸が見れないのは残念でなりません。
トリオは一人が欠けるだけで、その音は出なくなるのですね。

相続セミナー・説明会情報

外部講師セミナー

今から学ぶ終活と相続 ~幸せな相続の準備~

延期となり開催日が変更となりました。
時間と会場に変更はありません。
R4/5/12(木)追記

開催日時:令和4年5月14日(土) 6月11日(土) AM10:00~12:00
開催場所:Good Work 首里(那覇市首里山川町2-37)
定員:6名
参加費:1,000円(税込)
主催・お申込み・お問合せ:
有限会社オービック
☎050-5372-4497

【6/11(土)】今から学ぶ終活と相続 ~幸せな相続の準備~ セミナー開催!

自主開催相続セミナー

わかりやすい終活、相続と遺言書のはなし ~幸せな相続の準備~

開催日時:令和4年5月28日(土) AM10:00~11:20(80分)
開催場所:沖縄県教職員共済会館「八汐荘」(那覇市松尾1-6-1)
定員:8名
参加費:2,000円(税込)
お申込み・お問合せ:
行政書士ジャジー総合法務事務所
☎098-861-3953
✉お申込みフォーム
※件名に「5/28相続セミナー参加希望」とご記載ください。

・新型コロナウイルス感染拡大予防のため完全予約制となっております。
・会場は定員24名のところ8名(講師1名別)を開催定員としています。
・会場は換気し、ご参加者にはマスクの着用と手指消毒をお願いいたします。
・講師はマスク着用の上、講演いたしますことをご了承ください。
・感染拡大、医療現場の状況や緊急事態宣言などの発令により中止とすることもあります。

ラジオ番組

「ジャジーのJAZZタイム×幸せな相続相談」(FMレキオFM80.6MHz)
毎月第1および第3水曜日21:00~21:50放送中。
スマホのアプリでも聴けます。ダウンロードはこちらをクリックしてください。
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城間 恒浩

代表者行政書士ジャジー総合法務事務所
沖縄県那覇市松尾の遺言・相続関係専門のJAZZ好きの行政書士。 2010年に父親と祖母を同じ年に亡くし2度の相続を経験。 その時に感じたのが「気軽に相続や遺言に関する相談先があったらいいのになぁ」ということ。 そんなことから、身近な街の法律家、遺言・相続専門の行政書士として、自分の経験や学んだ知識で相続でお困りの方のご相談にのっています。 行政書士は遺産分割協議書や遺言書作成などの相続関係のお手伝いもできるのです。 1971年9月生。国際協力関係の仕事に約11年間、社会保険労務士の事務所で約10年勤務後、2015年10月より現職。 エクスマ塾67期。エクスマ・エヴァンジェリスト15期。エクスマ学院1期。 JAZZが大好き。好きな場所は、沖縄とニューヨーク。 2016年9月よりラジオ番組パーソナリティーとしても活躍中。お気軽に「ジャジー」と声をかけてください!

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