日曜日には読んでおきたいサザエさん家の相続物語。
JAZZ好きの行政書士城間恒浩(@jazzyshiroma)です。
僕は沖縄県那覇市松尾で遺言相続専門の行政書士として、遺言書や遺産分割協議書の作成、相続や終活のご相談を承っております。
これまで関係した遺言書・遺産分割協議書・贈与契約書等の作成は100件以上、相続相談は300件以上となっており、相続や遺言のことでお困りの方がいることを肌で感じ「相続は準備させすれば、ご本人もご家族も幸せになれる」ことを実務を通じて実感しています。
このブログでは、実務を通じて感じる相続や遺言の話を中心に書いています。
また、たまに相続や遺言以外のことを書いています。
サザエさん家の相続!
今日は日曜日ですね。
日曜日と言えば、国民的長寿アニメ番組「サザエさん」の放送です。
子供のころから、40年近く観ているアニメ番組です。
ほのぼのするから好きなんですよね。
暖かくなってきて気持ちのいい日が続く4月のある日、衝撃ニュースが流れます。
サザエさんファミリーの精神的支柱で、良妻賢母の磯野フネさんが亡くなりました!
TVのテロップにも流れるほどの重大ニュースです。
しばらくすると、フネさんの遺産の全容がわかります。
なんと長年の節約生活でためたへそくりが1,200万円あったのです。
相続はどうなるか?
誰が相続人で、誰がどれだけもらえる権利があるのか?
ご家族は、上の家系図にいる方に限定しましょう。
この場合、法定相続人と相続分は・・・
配偶者の波平が相続分2分の1、
第一順位の直系卑属である相続人のサザエ、カツオ、ワカメの相続分がそれぞれ6分の1となります。
ここで注意すべきはサザエさんの配偶者であるマスオさんとその子であるタラオは相続人にはなりません。
なお、万が一フネが亡くなると同時または以前にサザエさんが亡くなっていたらタラオはサザエさんの相続人の立場を引き継ぎ代襲相続人となります。
フネのへそくり1,200万円を法定相続分で分けると・・
波平600万円、サザエ、カツオ、ワカメがそれぞれ、200万ずつとなります。
ただ、しっかり者のフネさんは遺言書を遺しておりました・・・
故磯野フネの遺言書が台所から見つかる
フネの49日の法要で家族一同が久しぶりに集まる中、サザエがとあるものを見つけます。
それは、白い封筒に見覚えのある綺麗な字で、こう書かれていました。
「遺言書」
ちなみに遺言書は、台所にある冷凍庫に入っていたそうです!!
いつも台所に立っていたフネさんらしい(笑)
遺言書の裏面には、
「この遺言書は勝手に開封してはならない。
家庭裁判所で開封及び検認の手続き受けること。
令和2年5月1日
磯野 フネ ㊞」
49日の法要で集まっていた家族に、サザエは大声で叫びます!
「みんな大変よ!お母さんの遺言書が見つかった。開けちゃうわよ!」
成人したカツオとワカメ、年老いた波平、大学生となったタラオ、サザエの夫マスオ、波平の甥っ子家族のノリスケ、イクラとタイ子の順番に居間に入ってきます。
最後に、タマの忘れ形見、キンも飛び込んできました!
波平「バッカモ~~ン!サザエ、開けちゃいかん!封印されている自筆証書遺言は、家庭裁判所で開封しなければならず、遺言書は検認を受けないといかんのじゃ!勝手に開けると5万円以下の過料を払わんといかんぞ!」
カツオ「お母さん、遺言書なんて書いてたんだ!ところで、遺言書って何?」
マスオ「遺言書はね、故人が自分の財産をどのように処分するかを記した書面で、法的な拘束力があるんだよ。」
ワカメ「お母さんの最後のお手紙だよ!早く開けたい。裁判所に検認の手続きとろう!」
キン「ニャ~~ン♪」
遺言書の検認については、裁判所のサイトを参考にしてください。
故磯野フネの遺言書の内容とは!
家庭裁判所でフネの検認の手続きを終えたのは、フネが亡くなって、2か月半がたとうとしていたころです。
遺言書を開封して、サザエさんの家族一同は、驚き、紛糾します。
「遺言書
遺言者、磯野フネは遺言者の所有する財産に関し、以下の通り遺言する。
第1条 遺言者名義の以下の預金債権を全て、次女の磯野ワカメ(1942年6月15日生)に相続させる。
フジ銀行 あさひが丘支店 普通預金 口座番号123456789第2条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
沖縄県那覇市松尾1丁目15番7号 2階
行政書士ジャジー総合法務事務所
行政書士 城間 恒浩
昭和46年9月12日生第3条 前条の遺言執行者の報酬は、遺言執行者の定める額とし、次女磯野ワカメが相続する財産の中から支払うこととする。」
フネの遺言により全財産は、ワカメに託されることになりました。
しかし、遺言書を読んだ、波平、サザエとカツオは納得いかなかないようです。
波平「なんで、ワカメだけが相続するんだ!」
サザエ「おかしいわ!」
カツオ「1,200万円もの大金を一人で、独占するなんて!!」
口々に思いのたけを叫びます。
久しぶりに家族一同が顔を合わせたのですが、大きな騒ぎとなってしまったのです。
ちなみに、遺言書は、故人の最終意思で、遺産分割は法的に有効な遺言書があれば優先され、相続人は従うことになります。
遺言書が無い場合や相続人の全員が合意すれば、遺言書によらず、遺産分割協議をした上で、遺産の分割方法を決めることも可能ではあります。
故磯野フネが遺言書に託した想いとは・・・「付言事項」
おじちゃん、母親、おじさんおばさんが、大騒ぎする中、離れたところから行方を見守っていた、東大法学部3回生のタラオが、遺言書を手に取り言います。
タラオ「みんな、遺言書には2枚目があるよ!ちゃんと読んで!おばあちゃんの気持ちがわかると思う。」
そう遺言書には、2枚目があったのです。
そしてそこには、遺言者がどんな思いで、この遺言書を書いたのかを書き記す「付言事項」があったのです。
「(付言事項)
私の財産は預金が1,200万円だけです。
節約生活で、何かあった時のために少しずつ貯めた、いわゆるへそくりです。
ただおかげさまで最後まで、使う機会はなかった。
これもお父さんを始め家族に支えられたからだと思う。
みんなが元気でいてくれたからだと思う。
預金全額をワカメに遺した理由は、しっかり者のワカメに家族が何かあった時に、私の残したお金で、家族を助けてほしいと思ったからです。
お父さんに渡すと全部お酒を飲んでしまいそうだし、サザエに渡すとどこかに全部忘れてしまいそうだし、カツオに渡すと無駄遣いしそうです。
だから、ワカメに遺します。
磯野家に今後、何かあった時にはこのお金でワカメが助けてあげてくださいね。
もしかしたら、大変な役割を押し付けたかもしれないけど、ワカメならわかってくれると思います。よろしくね。
お父さん天国で待ってますよ。令和2年5月1日
磯野 フネ ㊞ 」
付言事項を読み上げるタラオの声が震えます。
そこにいる皆からも鼻をすする音が聞こえてきます。
ワカメに全財産が残されたり理由がわかりました。
フネは晩年大病を患い、手術さえすれば長生きできたかもしれないけれども、お金がかかることを気にして、結局、手術はしなかった。
家族は、このお金はその時に使うべきものだったのではないかと思いながら、フネの最後まで、家族を思う気持ちに寂しさが込み上げてきたのです。
遺言書を確実に執行するための「遺言執行者」
遺言書は、故人の最終意思であり、遺言書に書かれた内容は、遺族にも尊重されると思います。
ただ、それがあまりにも不公平であったり、理不尽である場合には、遺族が争うことがあるかもしれません。
今回のフネが遺した遺言書は、ワカメ一人が相続するという不公平極まりないものでしたが、フネの書いた「付言事項」が家族を納得させたのです。
フネの遺言で、遺言執行者に指定された僕(城間恒浩)は、フジ銀行にて、フネ名義の預金口座を解約し、ワカメの口座に全財産を振り替えて、ワカメから報酬をいただきました。
サザエさんファミリーの相続をお手伝いできて、光栄です。
ありがとうございます。
ちなみに「遺言執行者」とは、遺言書に書かれている内容を具体的に実現する権利を有し、義務を課された者です。
遺言者が死亡し、相続が開始したらすぐに遺言執行者として遺言の執行に動かなくてはなりません。遺言執行者は、相続人のうち誰かでも構わないですし、複数いてもいい。
また、僕らのような専門家でもいいし、法人でも構わないとされています。
遺言書を遺すなら、その想いを込めた遺言を確実に執行できるように、遺言執行者を指定することをお勧めします。
カツオの「遺留分侵害額請求」
フネの遺した遺言書を執行した僕は、後日、とても残念な報告を受けます。
フネの一回忌の直前に、カツオが、フネの相続に関しワカメに対し「遺留分侵害額請求」をしたそうなのです。
遊ぶ金の欲しさに、フネの相続に関し「遺留分」つまり相続する相続人の最低限の権利を保障する制度を利用して、請求してきたそうです。
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められている制度で、相続があってから1年、相続があったことをしった時から10年以内であれば、遺留分を侵害している相続人などに対して「遺留分侵害額請求」ができます。
「遺留分侵害額請求」の方法は、口頭、電話やFAXでも可能ですが、後々のことも考えて内容証明郵便で請求するのが確実かもしれません。
それでも相手方が応じない場合には、家庭裁判所で家事調停の申し立てができますし、調停が不調に終わった時には裁判所に訴えの提起も可能です。
遺留分の詳細については、以下のブログを読んでください。
知ってますか?遺言書を書く際に留意してもらいたい「遺留分」。
遺言書を書くときには、遺留分にも注意して書いてくださいね。
しかし、カツオはフネさんの気持ちを踏みにじったな。
カツオは大人になって酷い男になってしまった。
僕が遺言執行者となったフネの相続は後味の悪い結果となったのです。
(追伸)
もちろん、本件は全てフィクションです。
フネさんのヘソクリも本来の出所が波平さんやマスオさんのお給与だとすると、フネさんの財産と言えるのか、との解釈も出てきますが、フネさんの固有の財産として本件は書いていますので、ご承知おきください。
一昨年、サザエさんのTV放送50周年記念番組として、20年後のサザエさんファミリーの実写版の放送がありましたが、カツオはふらふらしてるけど、心優しい大人になってました。
今日のJAZZ
トランぺッター、リー・モーガンの《The Sidewinder》をB.G.M.にブログを書いています。
僕のラジオ番組のオープニング曲として、3年程使わせてもらいました。
ロックのようなノリで、とてもご機嫌な演奏です。
モーガンの代表作ですね。
ラジオのオープニング曲は他の演奏に変えましたが、やっぱり、好きで頻繁に聴いています。
聴いてると、なんだか、力が湧いてきますね。
相続セミナー・説明会情報
自主開催セミナー
(中止)「わかりやすい終活、相続と遺言書のはなし ~幸せな相続の準備~ 説明会」
開催日時:令和3年5月28日(金) 午前10時から11時20分
開催場所:沖縄県教職員共済会館「八汐荘」(那覇市松尾1-6-1)
新型コロナウイルス感染拡大予防のため完全予約制となっております。
また、感染拡大防止のため中止することもありますので、ご承知おきください。
沖縄県に緊急事態宣言が発令されたことから、中止といたします。
ご参加のお申し込みをいただいた方には、次回(6月24日木曜日)開催の相続セミナーに優先的にご参加できますようにお席を確保いたします。
(令和3年5月22日(土)AM9:50追記)
ラジオ番組パーソナリティ
「ジャジーのJAZZタイム×幸せな相続相談」(FMレキオFM80.6MHz)
毎月第1および第3水曜日21:00~21:50放送中。
スマホのアプリでも聴けます。ダウンロードはこちらをクリックしてください。
「行政書士がラジオ番組?」と不思議に思ったらこちらをクリックすると理由が分かります。