相続のことを考えるウチナーンチュの皆さんへ
昨今では、少子高齢化、核家族化や都市部への人口集中などにより、地方の人口減少や若者離れが深刻です。
しかし、沖縄は兄弟姉妹が多く、大家族で、賑やかなイメージがあります。
実際、出生率は日本でも群を抜いてトップですし、三世代で暮らしている家庭も普通にあり、親戚が近くに住んでいて賑やかに過ごしていて、助け合いがされているように思います。
ただ、一方で、相続では、兄弟姉妹や家族が多いことがリスクとなることもあります。
沖縄の相続事情の一つについて、書いてみました。
人口動態統計からみる相続
昨今の日本では少子高齢化が進み、様々な問題が提起されています。
人口減少、労働人口の減少、若者比率の低下は、日本の経済、社会保障制度や地域の存続など、多くのことに影響してきます
実際に人口減少は進んでいるのでしょうか?
まずは確認です。
厚生労働省のサイトで「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」を閲覧しました。
概数ではありますが、令和3年度(2021年)の出生数などは以下の通りです。
全国
出生数:811,604名(前年比29,231名減少)
死亡者数:1,439,809名(前年比67,504名増加)
人口の自然減少:628,205名
※1899年(明治32年)以来、過去最大の人口自然減少
合計特殊出生率:1.30(前年1.34)
公的な統計を見ても人口減少は継続しているということですね。
少子高齢化が進んでいるのは間違いないですね。
沖縄
出生数:14,535名(前年比408名減少)
死亡者数:13,582名(前年比1,192名増加)
人口の自然増加:953名(前年比1,600名減少)
※全国で唯一人口自然増加
合計特殊出生率:1.80(前年1.83)
合計特殊出生率については、2番目に高い鹿児島県が1.65ですから、減少しているとはいえ沖縄の1.80はとびぬけてる感じですね。
また、沖縄県だけは、人口の自然増(953人)となっています。
沖縄は人口面においても大きなポテンシャルがありますね。
そして、僕が注目したのは、死亡者数です。
全国では1,439,809名、沖縄では13,582名の方が亡くなっでいますが、その人数だけ相続が発生したことになりますね。
相続人の方もたくさんいて、相続手続きなどで大変ご苦労をされている方もいらっしゃるかもしれません。
沖縄は子供や兄弟が多いのは相続ではリスクにもなる
沖縄は、大家族で子供、兄弟や親せきが多いと言われていますが、上記の統計上の数字からもわかるかもしれません。
僕らの世代でも兄弟が3名以上いるのは珍しくありませんし、8名兄弟という友達もいます。
また、僕らの親の世代では更に多くの兄弟姉妹がいることも珍しくありません。
僕も相続の手続きをお手伝いした中で、被相続人であるお父さんが3度結婚して10名以上の子供がいるケースもありました。
まず申し上げたいのは、一般的には、大家族は賑やかで、助け合いもできるので、とてもいいことだということです。
家族が多いことのメリットですね。
しかしながら、相続においては、子供が多い、兄弟が多い、親戚が多いということがリスクになることもあります。
家族が多いことのデメリットになる可能性があるということです。
なぜかと言いますと、相続人は様々なお金にまつわる事情をもっていることがあります。
〇住宅ローン
〇子供の教育費
〇不透明な将来への不安
〇経済的な困窮
〇強欲
などなど。
そんな事情を抱えている相続人が多ければ多いほど、相続人全員で遺産分割協議(遺産の分け方の話合い)をする必要があれば、難航する可能性があることは想像に難くないでしょう。
皆さんも、友人や知人からそんな話を聞いたことがあるのではないでしょうか?
または、ご自身がそのような経験をされたことがあるかもしれないですね。
相続はお金に関する話し合いをしなくてはいけません。
家族とはいえ、お金にまつわる話をするのはなかなか難しいのです。
また、当事者同士が良くても、相続人ではない第三者、直接は関係のない者である相続人の配偶者や子供などが口を出してくることもあります。
血を分けた兄弟だったとしても成長して、独立し、社会に出て、家族を持てば価値観も変わってきますし、考え方も変わります。
自分の家族を第一に考えるようになるのではないでしょうか。
これまでもご相談を承った中で、良好だった関係が親の相続を原因として「あの人があんなことを言うなんて思わなかった」と涙を流し、憔悴している方もいました。
僕は相続においては「家族は仲がいいから大丈夫というのは幻想だと思ってください!」と伝えています。
悲しい言葉かもしれませんが、実際にそう感じている方も少なくはないと思います。
相続人が多ければ、その数だけ事情があり、考え方があるのです。
結果、話合いも難航するのです。
ですから、家族が多く相続人が多くなることが予想されるならば、しっかり遺言書を書いて、家族が困らないようにしてもらいたいのです。
相続において家族が仲がいいは幻想
ただし、相続人は多いけど、財産はそんなにない、というのも沖縄の特徴です。
場合によっては重たる財産が居住用不動産だけ、ということもあるでしょう。
そうなると完全に公平に財産を分与することは難しいかもしれません。
相続人が多い場合には、ある程度割り切った考え方で遺言書を書き家族にしっかりとその理由を説明をしておくことも大事だと思います。
遺言書は故人の最終意思ですから、ご家族も尊重してくれるはずです。