相続人が配偶者と兄弟姉妹になる場合に遺言書が必須な理由とは?

JAZZ好きの行政書士城間恒浩(@jazzyshiroma)です。
僕は沖縄県の県庁所在地である那覇市松尾で遺言相続専門の行政書士として、遺言書や遺産分割協議書の作成、相続や終活のご相談を承っております。
これまで関係した遺言書・遺産分割協議書・贈与契約書等の作成は100件以上、相続相談は300件以上となっており、相続や遺言のことでお困りの方がいることを肌で感じ「相続は準備させすれば、ご本人もご家族も幸せになれる」ことを実務を通じて実感しています。
このブログでは、おなたの知りたい相続や遺言の話を中心に書いています。

相続人が兄弟姉妹になるとトラブルが・・・

この仕事を始めて間もなくのことです。
ご高齢のご婦人から亡くなった旦那様の件で、とても深刻なご相談を受けたことがあります。

ご夫婦お互いに初婚でお子さんがおらず、ご両親もすでに他界し、亡くなった旦那様には兄弟姉妹がいました。
ご相談に来られた奥様は、旦那様のご兄弟から遺産を分けるように言われているが、応じないといけないのか、とのお話だったのです。

このケースでは、法定相続人の順番として、第一順位の直系卑属(子や孫など)がいない、第二順位の直系尊属(父母や祖父母など)も他界しているので、第三順位の兄弟姉妹と配偶者である妻が相続人となります。

ですから、夫の兄弟姉妹にも相続権があることを説明したら、とてもびっくりしておられました。

法定相続人の範囲

法定相続人の範囲

 

法定相続割合は、妻が4分の3(75%)、兄弟姉妹が4分の1(25%)となります。
ご相談のあった件は亡くなった夫(被相続人)の兄弟姉妹が3名とすれば12分の1ずつの相続割合があります。

配偶者と第三順位の兄弟姉妹が相続人となるケース。

配偶者と第三順位の兄弟姉妹が相続人となるケース。

例えば、被相続人の財産価額が3,000万円だったとすると、妻が2,250万円、兄弟姉妹が夫々250万円(合計750万円)を相続することになります。

遺言書なかったとすると相続人全員での遺産分割協議が必要となりますが、もし、遺産分割協議の際に夫の兄弟姉妹が自分たちは遺産はいらず、全ての遺産を妻が相続することに同意してくれるのであれば、遺産分割協議書を作成し、相続人全員で署名捺印して相続手続きを進めれば、めでたしめでたしで完了です。

しかし、被相続人の兄弟姉妹が同意してくれないようでしたら、兄弟姉妹の法定相続分の請求には応じなくてはならない可能性が高いですね。

ましてや、主な財産が居住用の不動産だとしたら、売ってお金に換えて皆で分けようと提案してくる人もいるかもしれません。

相続の準備がされていないと・・・

相続の準備がされていないと・・・

そうならなかったとはしても、法定相続割合に応じて不動産を共有状態にしたら不便も多くなることでしょう。

冒頭で、ご紹介したご高齢のご相談者は、亡くなった夫の兄弟姉妹が強硬に土地や建物を売ってお金に換えることを要求していて、とても困っていたそうです。

妻と夫の兄弟姉妹は交流がほとんどなく、夫が亡くなったことで完全に関係が切れてしまったんですね。
もともとは他人です。
夫を介して、表面上の付き合いをしていただけなので、自分たちの要求を強く出せたのでしょう。

兄弟姉妹には遺留分がない

では、このようなケースでの対処方法はないのでしょうか?
相続人が兄弟姉妹と配偶者となるケースです。

一番いい方法は、遺言書を書くことです。
なぜかといいますと、第三順位の法定相続人である兄弟姉妹には、遺留分がありません。

遺留分とは、相続人が相続する最低限の権利を定めた制度です。
配偶者(夫・妻)、直系卑属(子や孫など)と直系尊属(父母や祖父母など)に認められています。

遺留分については、次のブログを参考にしてください。

[blogcard url=”https://jazzyshiroma.com/archives/8259″]

遺言書があれば、遺留分のない兄弟姉妹は、何も手が出せないのです。
せいぜい、遺言書の法的要件の瑕疵を探して、遺言書無効の訴えをすることしかできません。
ですから、遺言書は法的に有効な完ぺきな遺言書を作成する必要はあります。

冒頭のご相談のあったケースでは、亡くなった夫は遺言書を書いていませんでした。
もし、全ての財産を妻に相続させるとの遺言書があれば、あんなにつらい思いをしなくてもよかったのです。

ちなみに、ご相談のあったケースは争いに発展していたので、知り合いの弁護士を紹介して解決を図ってもらいましたが、後日、お話を聞いたら、土地や建物は妻の所有となり、なけなしの預貯金は全て兄弟姉妹が相続したそうです。
住むところは確保できたけど、お金が手元にない・・・、少ない年金で生活していかないといけない、と話されていました。

なんとも、寂しい相続相談の結末でした。

しかし、この案件があったからこそ、僕は強く言えます。
遺言書は書いてください。
大事な人を守るために、遺言書を必ず書いてください。
貴方が亡くなった後に困ってしまう人がいるのです。

特に、配偶者と兄弟姉妹が相続人となることが想定される場合には遺言書は必須です。

遺言執行者の指定

最後にもう一つ。
遺言書を書く際には遺言執行者を指定してください。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する人の事です。
遺言執行者が指定されていたら、ほとんどの相続手続きで遺言執行者と遺言で相続することを指定された相続人(または受遺者)だけの署名・印鑑で手続きが進められます。
もし、遺言執行者が指定されていないと、他の法定相続人の協力が必要となるケースがあるので、相続人の中に遺言の内容に不服がある者がいたら手続きが進みません。

できたら専門家がいいでしょう。
なぜかと言えば、専門的な知識が必要になったり、スピードが求められえることもあります。
また、他の相続人とやり取りしなくてはならないことがあると、精神的な負担も大きいです。

僕も遺言執行者として、指定していただき、何度か手続きを進めていますが、大変な作業です。
遺言書を作ることがあったら、遺言執行者の指定も必須です。

お近くの行政書士に相談してみてください。

今日のJAZZ

明るい曲が聴きたいなと思ったらタイトルに惹かれて聴いたのが、ピアニスト、レッド・ガーランドの《Almost Like Being In Love》です。
「almost」は「もう少しで」「ほとんど」といったニュアンスがありますね。
タイトルは「もう少しで恋に落ちそう」とか「ほとんど恋しているような雰囲気」などの恋の始まりを感じさせます。
そんな気持ちをガーランドの軽快なタッチの音色が、とても気持ちよく表しています。
ウキウキする楽しい気持ちが伝わってきます。

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