封印のある遺言書を開けてしまったら無効になる?

JAZZ好きの行政書士城間恒浩(@jazzyshiroma)です。
僕は沖縄県の県庁所在地である那覇市松尾で遺言相続専門の行政書士として、遺言書や遺産分割協議書の作成、相続や終活のご相談を承っております。
これまで関係した遺言書・遺産分割協議書・贈与契約書等の作成は100件以上、相続相談は300件以上となっており、相続や遺言のことでお困りの方がいることを肌で感じ「相続は準備させすれば、ご本人もご家族も幸せになれる」ことを実務を通じて実感しています。
このブログでは、おなたの知りたい相続や遺言の話を中心に書いています。

午後は不動産会社から仲介を予定している土地の相続について、ご相談がありました。
三代前の相続なので、相続が続けて起こっている数次相続が発生していて、ざっと確認しただけで相続人が30名ほどいます。
実際に調査したらもっと増える可能性があります。
なんにせよ相続人の確定だけで、時間がかかりそうですし、遺産分割協議も困難を極めそうですし、裁判所での調停・審判による解決になるのではないかと思われる案件です。
なんにしても、相続人の確定は必要なので、ご依頼があれば動きたいと思います。
せっかくの土地が有効活用されずに眠ってしまっています。
こんなことにならないように、しっかりと準備してほしい。
準備とは遺言書を書くことです。

遺言書の検認とは?

近年、遺言書を書くことも増えているようで、家庭裁判所での検認手続きが増えています。
亡くなった方が公正証書遺言以外の遺言書を遺していた場合、保管者または発見した相続人は遅滞なく家庭裁判所で検認の手続きを取らなくてはならないのですが、検認件数は平成21年度が13,963件だったのに対し、平成30年度は17,487件となっており、3,524件増加(約25%増)しています。
遺言書が相続争いを予防し、手続きを円滑にする手段ということが分かってきているので、今後、遺言書の作成は増えるでしょう。

遺言書検認件数 H21-H30

遺言書検認件数(平成21年-平成30年)

公正証書遺言以外の遺言書の家庭裁判所での検認手続きが必要な根拠は、民法第1004条にあります。

(民法第1004条)
1.遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2.前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3.封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

また、民法第1004条の第3項に示してある通り、封印のある遺言書は、家庭裁判所で開封しなくてはならないとあります。

遺言書の封印とは、遺言書を入れた封筒の綴じ目に印などを押して封じることを言います。

遺言書封筒 封印

遺言書封筒 封印

もし、封印された遺言書が見つかったら空けてはいけません。
開封するためには家庭裁判所で手続きを経なければなりません。

通常は、遺言の検認手続きと一緒に行われるものです。
万が一、封印のある遺言書を家庭裁判所での手続き前に開けてしまった者があれば、民法第1005条にあるように、過料5万円を処される可能性があります。

(民法第第1005条)
前条(民法第1004条)の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。

なお、封印のない遺言書を開封することは問題ありませんが、検認の手続きは必要です。
ただ、遺言書を保管するならば、封筒に入れて封印をしておいた方がいいでしょうね。

封印された遺言を開けてしまったら・・・

では、封印のある遺言書を裁判所の手続きを経ずに開封してしまったら、その遺言書はどうなるのでしょうか?

答えとしては、遺言書が無効になるとは限りませんし、開封した者が相続人だったとしても、ただちに相続人としての地位を失うものではありません。
だからといって、過料を払えば封印のある遺言書を勝手に開けてはいいわけではありませんので、ご注意ください。

なぜなら、封印のある遺言書を勝手に開けるようなことがあれば、遺言の内容に不服ある者ならば、改ざん、変造や廃棄をする可能性が出てきます。
もちろん、そんなことをすれば相続人の地位は失いまずが、故人(遺言者・被相続人)の意思が実現されないので、避けなければならないのです。

開けたものが改ざんなどしなかったとしても、開封された遺言書を見た別の相続人が遺言書に不服があったとしたら、開けたものに対して改ざんしたのではないかと主張してくることも考えられ、そうなると遺言書の有効性が問われかねなくなります。

もし、自分で自筆証書遺言を作成したら、封筒に入れて封印し、通帳、銀行印や権利書などの大事なものを保管するように金庫などに保管しましょう。
または、信頼できる人に預けるのも一つの方法です。

ただし、遺言書を作成したことは家族に知らせておき、保管場所や保管方法は知らせておくといいのではないかと思います。

自分が亡くなった後に遺言書が見つからなければ、意味がありませんから。

遺言書を作成したら

遺言書を作成したら

今日のJAZZ

今週は外まわりも多かったので、少しばかり疲れました。
落ち着いたジャズが聴きたくてピアニスト、ビル・エヴァンスの作曲にして名演《Waltz for Debby》をBGMにしています。
なんともありきたりと言われそうですが、素人の僕にでもその美しさがわかる演奏ですからね。
エヴァンスが名のデビーのために作った曲として有名で、姪のデビーは何度も目の前で弾いてもらったそうです。

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