遺言を撤回したい時にはどうしたらいいか?

JAZZ好きの行政書士城間恒浩(@jazzyshiroma)です。 僕は沖縄県那覇市松尾で遺言相続専門の行政書士として、遺言書や遺産分割協議書の作成、相続や終活のご相談を承っております。
これまで関係した遺言書・遺産分割協議書・贈与契約書等の作成は100件以上、相続相談は300件以上となっており、相続や遺言のことでお困りの方がいることを肌で感じ「相続は準備させすれば、ご本人もご家族も幸せになれる」ことを実務を通じて実感しています。
このブログでは、実務を通じて感じる相続や遺言の話を中心に書いています。
また、たまに相続や遺言以外のことを書いています。

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遺言の撤回及び取り消し

質問が多い事項でもあるのですが、遺言書は何度でも書き直すことが可能です。
気が変わったり、財産状況や家族との関係が変われば、遺言書は書き直すことは可能です。
ですから、一度、遺言書を書いたら変更できないということはありません。

また、遺言書は撤回したり取り消すことも可能です。

法律上の用語では「撤回」は遡ってなかったことにすることで、「取り消し」は将来にわたってなかったことにすることです。

遺言の撤回の方法としては、民法第1022条に定めがあります。

(遺言の撤回)
第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

遺言者は、遺言の方式に従って、とありますが、必ず、遺言の方式に寄らなければならないのでしょうか?
遺言の撤回をするときに、その都度、遺言書を作成しないといけないのでしょうか?

実は、その他にも実質的に遺言を撤回すると見なされる方法があります。
民法第1024条に規定されています。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
第1024条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

遺言者が故意に遺言書を破棄したら、破棄した部分については、遺言を撤回するものとみなす、とされています。

ポイントは、遺言者(遺言をした者)は故意(自分の意思でわざと)で破棄(破り捨てたり、燃やしたり、訂正・修正したり)した場合には、遺言は撤回されるということです。

つまりは、遺言者以外が廃棄できないし、遺言者が誤って廃棄した場合には無効にはならないのです。

ただし、公正証書遺言については、原本が公証人役場に保管されており、手元にある謄本(原本を証明しているもの)を廃棄しても遺言は撤回されません。
公正証書遺言の撤回をする場合には、新たな遺言を作成することが必要ですが、その方式は公正証書遺言に限らず自筆証書遺言や秘密証書遺言でも可能です。

また、民法第1024条の後段の遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した時というのは、相続または遺贈するとしていた不動産、預貯金、現金や車などを処分したり、捨てたり、使ったりした場合には、その部分は撤回したものとみなすということです。

相続・遺言書関係参考図書

相続・遺言書関係参考図書

遺言書は最新の日付が有効となる

遺言書は何度でも作成可能であることは既述した通りですが、同じ遺言者が複数の遺言書を書き遺していた場合には、どのように扱われるのでしょうか?

民法第1023条に定められています。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

第1項については、以前に作成した遺言と最近作成した遺言で、内容が違う場合には、新しい遺言を有効にし、前の遺言は撤回したものとみなしますよ、ということです。

この場合の前の遺言と後の遺言は全部が違う必要はありません。
一部の違いがあった場合には、その部分だけが撤回されてことになります。

例えば、平成28年5月1日付の遺言書で「不動産は長男Aに相続させ、預貯金は全て長女Bに相続させる」とあったのが、令和2年5月12日付の遺言書では「預貯金は全て二男Cに相続させる」と預貯金の相続が長女Bから二男Cに変更になっている場合には、平成28年5月1日付の遺言書の預貯金の相続に関する部分が撤回されたことになります。

ただ、実務的に考えると、このような場合でも、できれば変更されていない部分も含めて遺言書を書きなおした方が分かりやすいとは思います。

自筆証書遺言法的4要件

自筆証書遺言法的4要件

遺言書は新しい日付のものが有効となります。
ですから、遺言書は作成日付が重要となります。

ちまみに、公証人が関わる公正証書遺言と秘密証書遺言については、作成日付が確定されるので、あまり心配しなくていいのですが、自分で作成する自筆証書遺言は十分に気を付けてください。

作成した日付がはっきりとわかるようにしなければなりません。
例えば、自筆証書遺言ならば、「令和2年5月12日」と書いたほうがいいでしょう。
「遺言者○○○○の満50歳の誕生日」「令和2年5月の母の日」などでも作成日は特定できるとされていますが、できれば避けたいですね。
また、「令和2年5月吉日」の「吉日」も作成日が特定できないので、無効になる可能性が高いようです。

 

今日は遺言書の撤回及び取り消しについて、解説しました。

 

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外は雨。事務所にはジャズ。
雨とジャズの組み合わせはいいですね。
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