遺言書を書ける年齢と遺言能力とは?

JAZZ好きの行政書士城間恒浩(@jazzyshiroma)です。
僕は沖縄県那覇市松尾で遺言相続専門の行政書士として、遺言書や遺産分割協議書の作成、相続や終活のご相談を承っております。
これまで関係した遺言書・遺産分割協議書・贈与契約書等の作成は100件以上、相続相談は300件以上となっており、相続や遺言のことでお困りの方がいることを肌で感じ「相続は準備させすれば、ご本人もご家族も幸せになれる」ことを実務を通じて実感しています。
このブログでは、実務を通じて感じる相続や遺言の話を中心に書いています。
また、たまに相続や遺言以外のことを書いています。

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遺言書をかける人とは

遺言書をかける人については、遺言能力があるか否かの判断になりますが、まずは年齢は下限が決まっています。
民法第961条に年齢の下限が規定があります。

民法第961条 15歳に達した者は、遺言をすることができる。

15歳以上であれば、遺言書はかけるということです。

では、上限はあるのでしょうか?
実は年齢の上限は定められていません。

ただし、遺言能力については、民法第962条と963条にさらに定めがあります。

民法第962条 第5条(未成年の法律行為)、第9条(成年被後見人の法律行為)、第13条(保佐人の同意を要する行為等)及び第17条(補助人の同意を要する旨の審判等)の規定は、遺言については、適用しない。

 

民法第962条では、未成年者(年齢20歳未満の者※2022年からは18歳未満の者)、成年被後見人(精神上の障害により事理弁識能力を欠く者)、被保佐人(精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分である者)と被補助人(精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者)についても遺言書はかけますよ、といった規定になっています。

なお、それぞれの身分についての判断は、未成年者以外は、家庭裁判所での審判によります。

ただし、未成年者でも遺言をするには15歳以上でなければなりません。
また、成年被後見人については、民法第973条で遺言の方法(①事理弁識能力を一時的に回復している②医師二人以上の立ち合いが必要③遺言時に事理弁識能力を欠く状況になかったことを書き記し署名・捺印)が具体的に規定されています。

ですから、未成年者、成年被後見人、被保佐人と被補助人であったとしても遺言書は作成できるのです。
その人の財産について、どのように処分するか、相続させるかを決める権利を法律が認めているからだと思います。
ただ、判断能力などが低下している人は、だまされたり、自分の意思で決められなかったり、大きな勘違いをしたりするので、遺言書の作成もそうですが、法律行為は気を付けなければならないですよね。

遺言能力とは

遺言書作成の実務上では、事理弁識能力・判断能力については、かなり慎重に考えます。
なぜかといいますと民法第963条に「遺言能力」について明確に規定されており、のちのちこの規定をめぐって相続人などの間で疑義が生じ、争うことが多いからです。

民法第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

 

遺言能力とは、既述したように事理弁識能力や判断能力がかかわってきます。
ただ、成年被後見人などであったとしても作成できるようになっています。

成年後見人が遺言書を作成する要件については、第973条で具体的に規定されていることは既述した通りです。
それでは成年後見人にはなっていないけど、ご高齢で判断能力に疑問が感じられる方々は「遺言能力」について、どのように判断されるのでしょうか。

実はこれも明確に判断基準があり、この状況だったら法令上まったく問題ない、ということはないのです。
なぜかといいますと事理弁識能力や判断基準を医学上明確に測定できないということが、大きいようです。

認知症イラスト

例えば、公証人役場では、遺言者が施設に入所していたり80歳以上だと医師の診断書を求めるケースがあり、診断書に「アルツハイマー型認知症」とある場合には、認知症の診断テスト(長谷川式スケール)を受けるように要請されます。
ただ、診断テストが何点以上なら「遺言能力に全く問題がない」と言えるものではないようで、公証人も遺言書を作成できる基準までをも示しているものではないようです。
また、後々、遺言能力が争われるようなことがあれば、遺言者のその時の状況を総合的に勘案される材料になるです。

例えば、少々判断能力に問題があったとしても、「全ての財産を妻に相続させる」など、遺言の内容が非常にシンプあれば、遺言者が認知症でも、その意思が反映されていると判断される可能性もあるかもしれません。

また、なぜ、遺言能力が争いになるかといえば、遺言書の内容に納得のいかない相続人がいれば、遺言当時の遺言者の状況を問題にすることは想像に難くないでしょう。
たとえ、公証人役場で作成した遺言書であったとしても、遺言者の遺言能力が争われて、遺言書が無効になった判例もあります。

遺言書を書ける人

遺言書を書ける人

遺言書は元気なうちに作成する

遺言書があったとしても遺言能力については、後々、問題が起きる可能性があることはお判りいただけたかと思います。
では、遺言応力について疑問が持たれないようにするにはどうしたらいいのか?

それは、元気なうちに、判断能力がしっかりしているうちに遺言書を作成することだと思います。
意思判断能力の低下がみられるのは、個人差があると思いますし、少々の物忘れは加齢によるものでしょう。
ただ、元気で、自分の判断をしっかりと家族に伝えられる状況にあるときに、遺言書を作成した、ということを伝えておけば「遺言能力」については、問題にしようという相続人もそう多くは出てこないのではないかと思います。

もちろん、遺言の内容が著しく不公平であったり、理不尽であったり、遺言書の法的要件を満たしていないなどがあるのは別の問題でもありますから、専門家に相談してください。

僕は、ご高齢者、施設に入っている方、入院している方、病気により体力や判断能力が劣っている方とお会いして、相続のご相談を受けたり遺言書を作成するお手伝いをすることがありますが、遺言書を作成するのは気力体力を必要としますので、ご家族も僕も心配になります。

なによりゆったりと過ごしてほしい時間に自分の死を考えて遺言書を作成しないといけないのは、精神的にもつらいと思います。

ですから、遺言書は元気なうちに書いてください。
健康上の問題がある場合は別にして、70歳までには遺言書は書いた方がいいのではないかと僕は思います。

必ず天寿はやってきます。
元気なうちにできることはしてください。

遺言相続専門の行政書士として、多くの方にお会いして感じていることです。

遺言書を書く人イラスト

遺言書を書く人イラスト

今日のJAZZ

ピアニスト、ビル・エヴァンスの《Beautiful Love》をB.G.M.にブログを書き上げました。
クラシック音楽に親しんだエヴァンスの演奏は、美しく、繊細で、優しいものでした。
この演奏をそんな感じがします。

相続セミナー・説明会情報

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